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2019年度

心拍計測に基づく分析

片田  澄海: 生体情報と棋力の相関分析
氏名: 片田 澄海 指導教員: 竹島 由里子 教授
将棋は、マインドスポーツとも呼ばれ、精神状態などで棋力(将棋の強さ)が変化することが知られている。しかし、どのような状態で一番能力が発揮できるかといった、詳細な分析はなされていない。そこで本研究では、心拍数や脳波などの生体情報と棋力の関係性を分析する。具体的には、生体センサを用い、心拍変動から自律神経バランスを算出する。また、脳波計を用い、計測した脳波からリラックス度合いを求める。
本研究では、詰将棋10 問を解いたときの生体情報を計測し、棋力との関係性を分析する。ここで棋力は、詰将棋の正答率や解答に要した時間などから定義する。また、脳波計測では、眼球移動によるノイズの影響が大きく出てしまうため、実験開始前後に目を閉じた状態での脳波を計測し、実験前後で脳波に変化が現れるかを比較する。
実験結果から、自律神経バランスと棋力の関係性は見られなかった。一方、脳波は棋力の違いによって変化が見られた。初心者は、意識の覚醒と、リラックスをすることができれば、棋力の向上が図ることができ、中級者は、緊張感を持つことができれば、棋力の向上が図ることができる。上級者は、リラックスすることで、棋力が向上することがいえる。
このことから棋力の向上を目指すためには、自身が初心者、中級者、上級者のいずれかに属しているかを知り、リラックスする方法や、緊張感が増す方法を、確立することができれば、最適な環境を作ることができ、棋力の向上を図れるのではないかと考察できる。
田崎  厚太: スマートフォン依存抑止のための画面制御システムの開発
氏名: 田崎 厚太 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年ではスマートフォンが広く普及し、魅力的なコンテンツが手軽に利用できるようになってきた。しかし、スマートフォンの利用ばかりしてしまうスマートフォン依存症になるユーザが増えており、深刻な問題として認知されている。昨今ではスマートフォン依存症を改善するため、ゲーム感覚でスマートフォンの不使用を促したり、スマートフォンを他方から管理し過度なスマートフォン利用を防ぐ「スマートフォン依存症改善アプリケーション」が登場した。しかし、使用欲求を抑えきれずスマートフォン依存改善を諦めたり、抑圧された反動でさらに依存が深刻化する例も珍しくない。
本研究では潜在的なストレスを与えることでユーザ自らスマートフォンを手放させる、非抑圧的で無理のない「使用意欲減退型」のアプリケーションを提案する。具体的には、スマートフォンの画面の色を変化させ、ユーザに心理的および生理的に負荷を与えるアプリケーションの開発を行う。提案手法の効果を検証するため、当アプリケーションの不使用時、当アプリケーションの使用時、従来のアプリケーションを使用時の自律神経バランスの変化および使用感のアンケート調査を行う。
実験結果から、「使用意欲減退型」による画面色の変化を行う機能のうち、暖色系である赤や黄赤色の画面に生理的な負荷を感じやすく、寒色系である青色の画面には生理的負荷を感じにくかったとが分かった。これは、暖色系が進出色であり、空間が圧迫される感覚があるのに対し、寒色系は後退色で空間が通常より広く感じられることが関係すると考えられる。また、色の成分から分析したところ、彩度が高く、輝度が低い色が生理的負荷を感じやすい傾向が見られた。それに対し、色相や彩度が関係しない黒は上記条件とは異なる基準が存在すると考えられ、追加実験が必要なことがわかった。
本研究では短時間利用した場合の検証実験しか行っていないため、長期的に利用した場合の効果が不明である。しかし、画面上の色の制御による「使用意欲減退型」の機能に一時的な効果が認められた。
木村  和暉: 楽曲の言語の違いによる作業効率の分析
氏名: 木村 和暉 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年の社会では、テクノロジーに関わる仕事が増え、デスクワークをしている人が増加傾向に向かっている。そのため、長時間パソコンに向かっている時間が増え、長時間労働によるストレスや集中力の低下にもつながってくる。その中で、より良い睡眠を行うためのBGMや勉強や仕事などの作業中に集中力向上を促す音楽、ストレス軽減のために聴く作業用BGMなど、音楽によって作業効率が向上する研究報告がある。しかし、どのような音楽の違いが適しているのかや、歌詞の有無が作業効率に影響するのかについては分析されていない。
そこで本研究では、歌詞の有無が作業効率に影響を与えるかどうかを分析する。具体的には、楽曲なし(ホワイトノイズを発生)と歌詞なしのカラオケ用音源、日本語歌詞あり、英語歌詞ありの3 つの楽曲を聞いている状態で、計算問題を解かせ、その解答時間および正答率を比較する。また、生体センサを用いて自律神経バランスの変化を獲得し、分析する。
実験から、ホワイトノイズとの比較では、どの楽曲も自律神経バランスが安定しているものが多く、比較的リラックスした状態で作業に取り組むことができると考えられる。カラオケ用音源はどちらの楽曲もストレス値は安定しており集中状態にあった。日本語歌詞ありはどちらの楽曲でも一番集中出来ないとアンケートで答えた人が多く、計算時間に関しても1 番遅い結果となった。しかし、計測した心拍数から算出した自律神経バランスの結果では、自身の印象とは逆に、ストレス値はリラックス、集中状態にいることが分かった。英語歌詞ありは楽曲によって、単純作業に向いているものと向いていないものに分かれる結果となった。また、実験後の被験者の感想から、歌詞の言語によって集中力が変化したことが分かった。さらに、歌詞がない楽曲ではほかのことを考えてしまい意識が逸れ、集中力が低下したといった回答もみられた。
本研究により、楽曲の歌詞の有無や、その言語の違いによって、作業効率やストレス状態が変化することが分かった。しかし、個人差や楽曲による差も見られたため、歌詞の言語以外の要因の影響を考慮した、さらなる分析が必要である。それにより、より集中力や作業効率を向上させる楽曲の発見に役立てられると考えられる。
佐藤  沙耶: 体温変化に基づく室内環境と眠気の関係分析
氏名: 佐藤 沙耶 指導教員: 竹島 由里子 教授
現代の日本では日中でも寝ている人を見かけることがある。近年では日中で寝ている人がいる原因として、青少年の頃から睡眠習慣が悪化しているために日中での活動中に眠気と格闘する日々が続き、日常生活に影響が出ていると見られている。また、夜に眠れなくて寝不足になったり、その日の日中で活動した内容や身体的疲労などが関係していると考える。周りの雰囲気や前日にとった自分自身の睡眠状態に加えて、室内温度や室内湿度、そして、時間の経過とともに変化する自身の体温が眠気を引き出すタイミングに合うと人は居眠りをしてしまうと考えられる。
本研究では、眠気にはそのときの行為、室内温度や湿度、時間の経過により変化する自身の体温、前日の自分の睡眠時間が関係していると考え、居眠りが減るかどうか調べることを目的とし、実験で室内温度と湿度、体温の数値を計測を行い、実験後のアンケートで、被験者の前日の睡眠時間を調査、環境による体温変化が眠気に影響するか分析する。
実験は講義形式で行い、実験内容は教室で講義を行い、被験者の状態をより詳しく調査するために5 分おきに被験者の体温と心拍数、室内温度と室内湿度を計測する。また、講義中の被験者の睡眠状態などに関する情報は、Google アンケートを用いて実施する。温度と心拍数の相関から2 つには関連性がなく、アンケート結果から温冷感が被験者の眠気と関連性がなかったため、温度と心拍数が眠気に関係しているとは言えなかった。
今回の実験結果から人が眠たくなる要因として室内環境以外に眠気が関係しているのではないかと考えた。今後実験前後の被験者が行った行動や講義中に何をしていたのかなど、より詳しく被験者の状態を質問すること。また今回の実験では環境に対する被験者の人数が少なかったので、もっと増やしてデータの数を集めたほうがまた違った結果を見ることができるのではないのか考えた。

視線計測に基づく分析

渡邊  彪我: 競技かるた時の身体情報の可視化と分析
氏名: 渡邊 彪我 指導教員: 竹島 由里子 教授
昨今では、競技かるたや百人一首を題材にした漫画の影響により、競技かるたへの大衆の関心が高まっている。また、その影響は海外にも広がっており、競技人口は年々増加している。一方、競技人口に見合うだけの指導者がいないことから、低級位、低段位の競技者は独自で技術を学ぶ必要がある。しかし、競技かるたの技術向上に関する研究は少なく、その方法は確立されていない。
そこで本研究では、上級者と下級者の相違点から、下級者の技術向上に役立つ情報が得られるのではないかと考え、暗記時間におけるそれぞれの身体情報を計測し、分析する。身体情報には、視線移動および自律神経バランスを用い、実際の対戦時の情報を収集する。また、対戦後には、試合中の意識などについて、被験者にアンケートに回答してもらう。
実験の結果、下級者と上級者では自陣と敵陣を見る割合に差があり、下級者は自陣を見る時間が短いことから、自陣に対する意識が上級者に比べて低いことが推測された。また、アンケートの結果から下級者は試合の途中から攻めと守りを切り替えることがないのに対し、上級者は攻めと守りの意識を切り替えて試合を行う傾向があると読み取ることができた。
実験とアンケートの結果から、上級者と下級者では、暗記時間の間に見ている場所に違いがあり、見ている場所への意識に違いがあることが推測された。このことから下級者は見る場所への意識を変えることでより早く技術向上できるのではないかと推測できる。
今後の課題として、本研究で得られた結果を利用して、実際に下級者の技術が効果的に向上するかを検証する必要がある。また、本研究では暗記時間における視線移動や攻守の切り替えなどについて分析を行ったが、実際の試合中の身体情報も計測することにより、試合全体を通した詳細な分析が可能になることが考えられる。
小林  息吹: ホラーゲームにおける恐怖演出の生理的指標に基づく分析
氏名: 小林 息吹 指導教員: 竹島 由里子 教授
ホラーゲームはゲームジャンルの1 つとして親しまれており、ハードウェアの進化とともにグラフィックスや恐怖演出なども変化している。また、ゲームには様々な機体が存在し、ゲームセンターに設置されているアーケードゲームや据え置き型のコンシューマーゲーム、近年ではゲーム自体をダウンロードして遊ぶPC ゲームやソーシャルゲームなども数多く存在している。特にPC ゲームはSteam やOrigin といったようなPC ゲームのダウンロード販売を行うプラットフォームや、無料で誰でも遊べるようなフリーゲームの存在によって規模が大きくなっており、ホラーゲームも例外ではない。さらには、コンピュータにより合成した映像、音響などの効果により、3 次元空間内に利用者の身体を投影し、空間への没入感を生じさせるVR も存在している。しかし、VR は一般家庭にはあまり普及しておらず、ホラーゲームでは主にPC ゲームが数を増やし続けている。
そこで本研究では、協力者の生理指標の計測を、ゲーム内での特徴や行われた演出と合わせて分析することで、PC ゲームのホラーゲームにおけるより効果的な恐怖演出を抽出することを目指す。得られた結果を用いて、ホラーゲームを製作することにより、より効率的に効果的な演出の実現が可能になると考えられる。
実験には、2 つのホラーゲームを用いて実験を行う。ゲームをプレイしている際、生理指標の計測また視線の検出を行う。そこからゲーム内で起こったことや恐怖演出を生理指標、視線から分析し、プレイヤにより恐怖を与えた演出や場面を明らかにする。
実験結果から、恐怖演出が起きる際、1 度小さな演出を入れることでその直後の演出に対する反応を増幅させることができると分かった。また、1 人称視点では視野が狭いことや1 つ1つのオブジェクトを大きく注視することがある。そのため、周りに意識が向きにくくなり、不意な音に対して敏感に反応することなどが確認できた。
渡辺  拓海: 視線追従装置を用いたシューティングゲームのスキル分析
氏名: 渡辺 拓海 指導教員: 竹島 由里子 教授

コンピュータグラフィックス

新田 彩実果: 3DCG キャラクタにおけるメイクによる印象変化の分析
氏名: 新田 彩実果 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年、コンピュータ性能の向上に伴いコンピュータ・グラフィックス(以下、CGと略す)の制作技術も驚異的な進歩を遂げており、ほとんどのアニメーション作品がCG の技術を用いて制作されるようになった。アニメーションに登場するキャラクタも、3 次元CG(3DCG)で作成され、実写と遜色ない映像表現が可能になってきている。実世界と同様に、キャラクタの印象もメイクによって変化すると考えられるが、その印象変化については研究されていない。そこで本研究では、3DCG キャラクタにおけるメイクの印象変化を調査する。特にメイクの中でもアイシャドウおよび口紅の色相に着目し、その印象について調査を行う。
本研究では、メイクの異なる3DCG キャラクタ画像を作成し、その印象を問うアンケートを実施する。3DCG キャラクタ画像は、アイシャドウの色相を変更したもの5 パターン、および、口紅の色相を変更したもの3 パターンを作成する。アンケートを実施し、それぞれのメイクがどのような印象を与えるかを評価する。次に、アイシャドウおよび口紅の色相を組み合わせた画像を作成し、その印象についてアンケートを実施する。これにより、メイクした時に感じる印象と、両方同時にメイクした時に感じる印象が変化するかを調べる。
実験から、アイシャドウの色相により男女で印象に違いがあることが明らかになった。男女ともにアイシャドウの赤の色相は、「柔らかい」や「癒される」などの女性らしい印象を受けることが明らかになった。一方、青の色相では、女性が「かっこいい」という印象を受けるのに対し、男性は異なる印象を受けている例も見られた。さらに、口紅のメイクはあまり男女差が見られなかった。また、アイシャドウと口紅の組み合わせ画像では、男女ともにアイシャドウおよび口紅が同様の印象を受ける色の組み合わせでは、よりその印象が強くなる傾向があった。以上のことから、適切にメイクの色を選ぶことで、キャラクタイメージにより適した表現が可能になると考えられる。
本多  宏隆: 反応拡散モデルに基づくアカハライモリの腹部模様の自動生成
氏名: 本多 宏隆 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年、電子機器の性能向上に伴い、コンピュータグラフィックス(CG)で扱えるポリゴン数が増加し、画像解像度や処理能力が向上している。しかし、ゲームなどの対話的な処理が求められる環境では、複雑な表面構造をポリゴンだけで表現することは困難であるため、テクスチャや法線マップを用いた疑似的な方法が利用されている。これらの方法は、物体や生物を自然に見せるために必要不可欠であり、より精度の高いテクスチャの生成が重要である。
そこで本研究では、反応拡散モデルを用いた、生物の模様のテクスチャ生成手法を提案する。反応拡散モデルは、化学反応と分子の拡散を組み合わせたモデルであり、生物の模様を表すモデルの1 つとして知られている。本研究では、腹部模様が地域的特徴をもつアカハライモリに着目し、その模様の生成を行う。
本研究の目的は、アカハライモリの腹部模様を数式を用いて自動で生成し、生物の個体差を数値の差を用いて再現することである。この目的を達成することにより、テクスチャ作成でのコスト削減や、クオリティ向上が見込めると考えられる。実験として、実際に確認されたアカハライモリの腹部模様の再現を行った。その結果、模様が大きな塊を形成し、丸みを帯びた輪郭のものは再現可能であった。しかし、模様が細かく、枝状に広がるものは再現することができなかった。
生物の模様のすべてを再現するためには、今回の手法では不十分であった。しかし、数値を変えることによって個体差を表現できた。テクスチャを作成する場において、反応拡散モデルを活用するということは非常に有効的であると言える。生物の模様発生のメカニズムや、拡散反応式といった模様発生の原理の理解を深めることで、将来的に生物の模様の発生シミュレーションは可能であると考えられる。
小林  和哉: カビ増殖のビジュアルシミュレーション
氏名: 小林 和哉 指導教員: 竹島 由里子 教授
カビは人間の生活環境のそばに多く存在し、人に対して有害な生物である。カビによる健康被害として、カビ毒による中毒症状や気管支炎、喘息といったカビ胞子の吸引でのアレルギー疾患、水虫やタムシのカビが体に付いて引き起こす感染症が挙げられる。そのため、カビ対策は人の生活環境維持に重要な対策だと言える。一方、生物分野では、カビ繁殖に適した環境条件やカビが繁殖する要因、その成長過程が解明されてきており、環境条件からカビの成長度合いを予測するカビ指数も研究されている。それを受け、実際の環境データに基づいて菌糸成長と菌糸挙動をシミュレートできれば、カビ増殖を再現でき、なおかつ予測して増殖場所を可視化できると考えた。
本研究では、カビ増殖の予測可視化の足掛かりとして、環境条件に基づいた成長と挙動を行うカビ増殖シミュレーションを開発する。菌糸成長に似てると考えるシミュレーションモデルの拡散律速凝集に、カビ指数による成長制御、結露場所へ進ませる伸長と分岐制御を組み込み、環境データを基に成長と挙動を行うシミュレータを作成する。それらでシミュレータを作成する事で、実際のカビ増殖速度とカビの広がり傾向である屈性反応を考慮した菌糸挙動を環境データを基に再現可能と考える。今回環境データが取得不可能だったため、自然なノイズを生成するPerlin noise と飽和水蒸気圧を求めるTentens の式を利用して、カビ指数による成長制御と屈性反応を考慮した菌糸挙動ができる擬似環境データを作成する。シミュレーション比較では、木材上に増殖するカビの成長度合いを予測するカビ指数を用いたため、実際に木材上に増殖するカビの画像と比較し、表現の適性度を評価を行う。
比較結果は、いくつかカビの最適環境設定ではカビ増殖を行うことができなかった。また増殖表現では、全体的な増殖や菌糸の伸長と分岐は似ていたが、全体的な過剰分岐や菌糸の揺れでカビ増殖表現には似ていなかった。しかし、水分への屈性反応と成長速度制御ができていることから、細かな伸長と分岐制御を行えば増殖表現再現に役立つと考えられる。

テキストの感情値分析

上山  遼馬: 続きが読みたくなるあらすじの特徴分析
上山 遼馬 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年、物語作品の数の増加、多様化が進んでいる。そのため、買い手側は自分が望む作品を探し出すことは困難であり、一方、売り手側は顧客のニーズに合わせて作品を販売することが難しくなっている。作品を選ぶ判断基準の一つにあらすじがある。あらすじでは、販売の促進を目的とし、結末を除いた作品の概要を述べている。あらすじを読み、続きが読みたいと思えば、読者は数多くの作品の中からその作品を選び、購入する。そのため、続きが読みたくなるあらすじの特徴が抽出できれば、これを基にあらすじを作ることで商品の販売に役立てることができると考えられる。
そこで本研究では、あらすじの続きの読みたさの度合とそう感じた要因のアンケート調査、形態素解析を用いた構文解析、感情値分析、単語難易度の判別を用いた構文解析、内容の解析を行い、解析結果を可視化することで特徴を分析する。アンケート調査では、続きが読みたいあらすじに、アンケート項目が関係あるか相関を見る。形態素解析では、続きが読みたいあらすじに、あらすじの総文字数、一文の平均語数、固有名詞の割合が関係あるかを調べる。感情値分析では、続きが読みたいあらすじに、感情値の変化が関係あるかを調査する。単語難易度の判別では、続きが読みたいあらすじに、テキストの難易度が関係あるかを調べる。内容の解析では、続きが読みたいあらすじに、テキストの内容の構文が関係あるかを考察する。
調査に用いるあらすじは、電子書籍サイトBookLive!から、ミステリー・サスペンスジャンルの小説10 作品を選定し、原文からマーケティング文を消去した状態で使用した。アンケート調査では、続きが読みたいあらすじには、「気になった単語、文章がある」、「1行目にインパクトを感じる」、「作品内容の概要を理解できる」といった特徴があることが分かった。また、内容の解析では、続きが読みたいあらすじには、「物語の売りが1 行目に書かれている」、「情報量は適している」といった特徴があることが分かった。しかし、形態素解析、感情値分析、単語難易度の判別では、続きが読みたいあらすじの特徴の傾向は見られなかった。これらを基にあらすじを書くことで、読者に続きが読みたいと思わせ、商品を購入してもらう事に役立つことができると考えられる。
田村 健一郎: 災害時におけるTwitter の拡散力と投稿内容の関係分析
氏名: 田村 健一郎 指導教員: 竹島 由里子 教授
スマートフォンの普及に伴い、近年SNS は急速に発達してきている。SNS ユーザは年々増加傾向にあり、今後もユーザ数が増えていくと考えられている。これまでSNS の利用はほとんどが個人の利用であったが、近年では企業もSNS の拡散力に目を付け、企業までもがSNSで情報発信をする時代になった。これらのことから、SNS で情報を拡散させようという動きが非常に活発になってきている。中でも日本人は匿名条件下で利用できるTwitter を好む傾向があり、国内ではLINE に次ぐ2 位のシェア率を誇っている。
Twitter ではリアルタイムの情報を多くの人と共有することが可能な為、緊急時にはニュースなどよりも、Twitter で状況確認をした方が良いケースが多い。また災害時には、電話やメールなどの連絡手段が断たれることが多々あり、Twitter 上で情報共有をすることが重要になってくる。実際に東日本大震災の際には、ほとんどの連絡手段が断たれ、Twitter が極めて重要なを情報共有ツールとなった。これらのことから、災害時にはTwitter を利用して有益な情報を拡散させることが大切だと考える。そこで、災害時のTwitter の拡散力と投稿内容の関連性を調査することによって、災害時における拡散されているツイートの特徴を分析できるのではないかと考えた。
本研究では、災害時にどのようなツイートが拡散されているのかを調べるために、災害時において拡散されているツイートと一般ツイートの特徴分析をWord Cloud を用いて行う。結果、拡散されているツイートでは、メディア付きの投稿が多く、また被災者の投稿が多い傾向が見られ、被災した土地名などの固有名詞が多く見られた。一方、一般ツイートでは、被災者を心配する声などの被災者以外の人の投稿が多かった。結果として、拡散されているツイートは被災者視点の投稿、一般ツイートでは被災者以外の視点での投稿という相関関係が見られ、拡散されているツイートの特徴を見出すことができた。
野崎   響: CM 評価のためのツイートの感情値分析
氏名: 野崎 響 指導教員: 竹島 由里子 教授
近年では、テレビだけではなくSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や動画サイト等のインターネットの中でもCM(commercial message) が流れており、CM を目にしない日はない。多くのCM は、企業などの広告主が自社製品を宣伝するために利用している。そのため、広告主が伝えたい内容を正確に伝えられるCM が求められている。また、競合製品との差別化を図るためには、CM による宣伝においても他社との違いを出す必要がある。しかし、CM の内容や構成により、その印象や記憶への定着率が変化すると考えられるため、それらを考慮したうえでCM を作成する必要がある。そこで本研究では、実際のCM が視聴者にどのような印象を持たれているかを分析し、視聴者の印象に残るCM がどのようなものなのかを調査する。ここで、CM に対する意見や感想がSNS 等で数多く発信されていることに着目し、Twitter に投稿されたツイートを感情値分析する。なお、分析対象は、大手携帯会社3 社(au、docomo、softbank)のCM とする。
実験から、3 社とも年末年始にツイートが集中していた。これらに関するツイートは、新年に初めて放送されるCM を特別視していたり、年末やクリスマスの時期限定の季節感のあるCM が視聴者の共感を呼ぶといった共通点があった。しかし、3 月から9 月にかけては全体的にツイートが減っており、収集したツイートの中でもその期間は収集対象外であった企業の宣伝が大多数を占めていた。あまりツイートがないことから、その期間は視聴者にとって関心がない、またはCM をあまり視聴できないことが窺える。だが、ポジティブな意見の半数以上はCM に出演しているタレントや背景で流れているアーティストの楽曲に関心がある。起用するタレントやアーティストをその時の流行にすれば空いた期間のツイートは活発化すると考える。

情報可視化

奥野  達也: 国ごとの映画ポスターが与える印象調査
氏名: 奥野 達也 指導教員: 竹島 由里子 教授
映画を宣伝するための一つの手段として映画ポスターがある。映画ポスターは、映画を鑑賞する際に、ひと目でその作品の内容や魅力を伝えることができるため、なくてはならないものである。また、多くの人に映画を観てもらうことが目的であるため、与える印象はとても重要である。近年では、同じ作品でも、国によって全く印象の異なるポスターデザインが使用されることが話題となっている。しかし、同じ作品でも各国でポスターデザインが違うことで印象がどのように変わるのかを調査した研究は少ない。そこで本研究では、各国の映画ポスターが与える印象を分析し、国によってどのような違いがあるのかを明らかにする。
映画には様々なジャンルがあるが、本研究では多くの国で上映され、人気も高いディズニー映画の中から5 作品を選定する。比較を行う国は、映画ポスターが世界でも人気で市場での価値も高い、日本、アメリカ、中国、フランス、ドイツの5 カ国とし、各国の映画ポスターの印象評価アンケートを実施する。ポスターの印象は、複数の形容詞対に対し、当てはまるかどうかをSD 法によって分析する。そして、アンケートによって得られたデータを国ごとにイメージプロフィールにまとめることで分析を行った。
アンケート結果から、アメリカと中国は、「感動」よりも「迫力」や「明るい」といった楽観的な印象のポスターが多かった。反対に日本とフランスの映画ポスターは、「感動」や「しんみりした」、「寂しい」などの悲観的な印象が強く現れていた。ドイツの映画ポスターは、「親しみやすい」、「明るい」の印象が強く現れており、5 作品すべてが同じような結果となった。これらの結果から、映画の売り出し方には国ごとにある程度の決まった印象というものがあると考えられる。
川野   陸: 台風の移動経路と被害状況の分析
氏名: 川野 陸 指導教員: 竹島 由里子 教授
日本には、毎年夏季シーズンに多くの台風が接近・上陸している。日本の南東の海上には、台風が数多く発生・発達しやすい熱帯低気圧、亜熱帯低気圧があり、そこで発生した台風が地球の自転の影響で北へ向かい、貿易風と偏西風の流れに乗って日本列島に接近する。近年では、大型台風による河川の氾濫や浸水被害、土砂災害等が深刻な問題となっている。台風による被害が予想される場合は、地上波のニュースや地域のアナウンス、位置情報をもとに携帯電話に送られてくる警報などで、被害予想地域や想定される被害の情報が発信される。しかし、その場で受け取った情報だけで、情報の受け手側がどの程度その危険性を把握できているかは不明である。そこで、過去に起きた実際の被害状況などを知ることによって、より深刻に状況をとらえることができるのではないかと考えた。
そこで本研究では、過去に日本に接近・上陸した台風の移動経路や規模、その被害状況などをまとめたマップを作成し、日本付近を通過する各台風の傾向を見つける。得られた情報に基づき、気象に詳しくないユーザであっても、今後日本に接近・上陸する台風の移動経路や規模、被害状況を容易に予測するできること目指す。過去の台風による被害状況の傾向を分析するために、本研究では、汎用情報可視化ソフトウェアであるTableau を用いて、台風の移動経路と被害状況を重畳したマップ作成する。
その結果、日本列島に接近・上陸する台風の移動経路には、特定の傾向はみられなかったが、発生場所が近い台風は同様の移動経路を辿ってくることが分かった。また、台風の被害状況は、台風の移動経路だけでなく、被害地域の地形や台風との位置関係が関係してくることが分かった。
谷口 比呂夢: 外来種生息状況の可視化による在来種減少原因の分析
氏名: 谷口 比呂夢 指導教員: 竹島 由里子 教授
羽山  敦哉: サッカーの試合における得点時のフォーメーション変化の可視化
氏名: 羽山 敦哉 指導教員: 竹島 由里子 教授

2018年度

多感覚を利用した解析

野本  郁弥: CTデータに基づく3Dプリンティングのプロセス最適化と調理支援への活用
氏名: 野本 郁弥 指導教員: 加納 徹 助教
 近年、X 線CT データを用いたコンテンツが開発されつつある。その中で、X 線CT データを3D プリンティングする研究はあるが、調理支援に3D プリンティングが使われる例は見られない。料理とプリンターに関連して、クッキーやマカロンなどに直接印刷をするフードプリンターや、飲食店で展示されている食品サンプルが挙げられるが、調理を支援するという用途ではない。
 そこで、本研究では食材のCT データを3D プリンターで印刷する最適なプロセスを確立し、調理支援への活用を目指す。まず、マイクロフォーカスX 線CT 装置を使用しCT データを入手し、3D データ化を行う。CT データの上側境界値と下側境界値を設定することで、魚であればCT 値の高い骨のみの3D モデルを作成することが可能である。一般的な3D プリンターの造形範囲は約150mm 四方であり、再現する食材が造形範囲を超える場合は、印刷を複数に分ける必要がある。そのため、モデルの分割や結合機構の作成といった3D モデルの編集を行う。また、3D データ化を行った際に印刷時に不要なオブジェクトが出力されるケースがあるので、必要部分のみの抽出や削除といった編集も行う。最終的に完成した3D モデルを印刷し、印刷物に付着するサポート材を剥がし完成させる。
 今回の実験ではイカ、チョウチンアンコウ、ハタハタ、アジといった魚の3D プリンティングを行った。イカの印刷では外観のみの印刷を行い、標本と同じ再現に成功した。チョウチンアンコウの印刷では、CT 値を指定することで骨のみの3D モデル抽出が可能となり、骨の立体的構造を把握しやすい印刷物を作成することに成功した。しかし、ハタハタの印刷では、チョウチンアンコウと同様に骨のみの抽出に成功したが、骨の細い部分は耐久性に欠け、サポート材を剥がすと同時に剥がれてしまい、骨格標本のような綺麗な状態で印刷することに失敗した。そこで、アジの実験では標本サイズより大きい状態で印刷を行い、細い骨の補強を試みた。ハタハタの印刷時より細い骨の表現が出来るようになったが、数本は細い骨を折ってしまうことがあり、良い状態で再現するのに失敗した。標本サイズと異なる大きさになってしまうという問題もあるため、モルフォロジー演算などで骨周りを太くする等の前処理を行うことでより綺麗なモデルを印刷することが可能となり、更なる調理支援の向上が見込まれる。
石原  創太: MRを用いた歯科インプラント治療用サージカルガイドの作成
氏名: 石原 創太 指導教員: 加納 徹 助教
 近年、医療現場においてMRを用いることが注目されつつある。本研究ではその中でも、歯科医療現場においてのMR活用に着目した。治療の仮想上でのトレーニングシステムとしてMRを使用したものなども存在するが、それらはあくまで周辺空間上への情報や画像を表示するものにすぎず、より施術の環境と密接に結びついたMR活用をすることが、今後の歯科治療のデジタルテクノロジー活用の足掛かりになるのではないかと考えた。
 本研究では、MRデバイス「HoloLens」と、開発ツール「Unity」、開発支援ライブラリ(追加機能)「MRToolKit」「Vuforia」を用いて、患者の口腔内に、「インプラントを埋入させるためのガイド」を表示し、治療のサポートや医療トラブルの低減を図るシステムの作成をすることを目的としている。今回の制作にでは、ガイドの表示対象を「口腔内の石膏モデル」とし、施術のシミュレーション段階の支援に用いるものとして開発を行う。
 HoloLens で利用可能なアプリケーションを作成するにあたって、まずUnity とMRToolKit を用いた制作を行った。必要なオブジェクトの形状や、オブジェクトのスケール値などの情報を得ることができたが、小さな範囲での表示精度が不足しているためVuforia を追加した。次にアプリケーションを作成する前段階として、いくつかの予備実験を行った。まず、HoloLens にインプラントの埋入位置と角度のデータを入力し、Vuforia で作成したマーカーを認識させることで目的のガイドオブジェクトを表示することができるようになると考え、認識精度の高いマーカーの画像を調査した。
 制作の結果、インプラント治療のガイドを想定したオブジェクトの表示を行うことに成功した。さらに、予備実験を経て、より認識されやすいマーカー画像を制作するためには、四角形が重なり合った形状が適していると考えられることが分かった。しかし、カメラの解像度やマーカーを使用する大きさなどを考慮すると、複雑な図形は認識されづらくなるという結果も得られた。本制作では、ガイドを表示する対象が比較的小さな石膏モデルであるということを考慮して作成しなければならない。これまでのアプリケーション制作によって得られたデータをまとめることで、今後のHoloLens を用いた開発を行う上での手助けになると考えられる。
西木   純: VRを用いた移動経路学習システムの効果解析
氏名: 西木 純 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、インターネットやスマートフォンの普及により、いつ、どんな時、どんな場所にいてもインターネットにアクセスできるようになった。それによりほぼすべての情報を入手することが容易になった。知りたいことは調べれば知ることができ、行きたい場所には行けるようになった。Google マップなどを使えば、目的地まで案内してくれるという優れたものまで世の中には存在している。しかし、便利になる一方、その便利さに依存してしまっている。2018 年12 月6 日(木) 午後1 時半頃から約5 時間にわたってソフトバンクで大規模通信障害が発生した。そのため、多くの人々が混乱し、ソフトバンクユーザーには情報が一切入らなくなる状態に陥った。緊急事態に備え機械に頼るのではなく自分の能力を向上させることが必要である。身近で身につけておかなければならない能力の一つとして、地図を読み取る力がある。しかし、地図を読み取る力には個人差がある。そこで、地図を読み取れる人と読み取れない人では、移動時に注目している点が異なるのではないかと考えた。
 本研究では、地図を見ることが苦手な人、機械的な案内がないと目的地にたどり着けないような人たちを対象にヘッドマウントディスプレイを使い、移動時に注目するべき点を学習させるシステムを提案する。具体的には、地図理解力を判断するための実験を行い、地図理解力が高い被験者と低い被験者がそれぞれ注目している点を比較する。地図理解力が高い被験が移動時にどこに着目しているかを分析し、360 度カメラで撮影した映像を元に注目点を学習させる。システム使用前後の記録を比較することで理解力の変化を調査することができると考えられる。
 本研究の結果、移動時間が短縮されていることから、提案システムにより地図理解力が向上することが明らかになった。
魚嶋  良和: 航空機によるエンジン騒音のリアライゼーション
氏名: 魚嶋 良和 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、航空機は人や物の輸送など生活にとって欠かせないものとなっている。エンジンや空気抵抗などで発生する騒音が、会話の声が聞き取りづらさや睡眠障害の原因になっている。この問題を減らすべく、航空機のエンジンなどのパーツごとの低騒音化や翼の形状を最適化、風切り音の軽減など航空機から発生する騒音の低騒音化が進められている。これらの解析は数値シミュレーションを用いて行われていることがほとんどであり、得られたデータを可視化することにより視覚的に解析を行っている。そのため、実際にどのような音が発生しているかを感覚的に捉えることが困難である。
 そこで本研究では、航空機のエンジン音を視覚と聴覚を併用することで、既存の研究では理解が困難だった発生した音の伝播状況を、より直感的に解析できる環境を提案する。具体的には、航空機エンジン周りの音波分布データを可視化し、音の伝わり方のアニメーションを作成する。さらに音波分布データからエンジンの音の圧力データを取り出し、それに基づいて音を作成する。作成したアニメーションと音を合成することにより、航空機のエンジンから発生する音の伝わり方を視覚と聴覚によるリアライゼーションを行う。これにより、音の伝播状況を直感的に理解することが可能になり、問題対策の手助けが可能となる。
 本研究の結果、視覚と聴覚の両方を用いることで、視覚と聴覚のどちらか片方のみで音の伝わり方を確認するよりも音の特徴を理解しやくなる結果となった。また、航空機のエンジンから発生する音の伝わり方は、エンジンの前後のナセルが付いていない場所やナセル後方から外に波紋のように伝わって行くことが明らかになった。さらに、翼や航空機本体に沿って音が伝わっていく様子も明らかになった。

心拍計測に基づく分析

高田  郁也: 身体計測における遊技機利用時の興奮度分析
氏名: 高田 郁也 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、カジノ法案が話題に上がることが多いが、その際にギャンブル依存症についての問題が数多くある。ギャンブル依存症で一番多いのがパチンコ、パチスロによるもので、本研究では依存症の要因を探るために、本来の遊技としての在り方を提唱すべく遊戯中に遊技者がどのような身体的な変化があるのかを分析する。計測方法としては4 円パチンコ、1 円パチンコ、20 円スロット、5 円スロットの4 レートで各4 時間ほど遊戯してもらい計測を行った。その結果、被験者2 名ともが、2人の被験者に協力をしてもらったが2 人とも4 円パチンコ、20 円スロットといった高レートでは熱い演出や、当たりの際に心拍の数値が著しく上昇していた。しかし1円パチンコや5 円スロットの低レートでは当たった際にも数値の変化はそこまで見られなかった。これらのことからギャンブル性の高い高レートでの遊技が心身にストレスや興奮を与えており、そこに依存症になる要因があるのではないかと考えられる。低レートでは心拍数の変化が見られなかったことから高レートほどドキドキ、ワクワク感がなく遊技としての面白さが少し減少している可能性が考えられ、それらのことから多少のドキドキ感があり、ギャンブル性がそこまで高くない2 円パチンコや10 円スロットが最も遊技として適切と考える。世間ではパチンコ自体を無くしたほうが良いという声も多いが、4 円パチンコ、20 円スロットの高レートを廃止し2 円パチンコや10 円スロットを主流とすればギャンブルではなく遊技として、そしてギャンブル依存症も自然と解決に向かっていくと考えられる。
津久井 尚輝: 玩具が与える心理的影響の分析
氏名: 津久井 尚輝 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、玩具業界の売上高は横ばい状態が続いている。従来の玩具業界のメインターゲットといえば子供であったが、少子高齢化に伴い、メインターゲットの縮小は避けられない。そのため、今までターゲット層としてあまり重要視していなかった層に向けても商品展開を行っていく必要がある。このことから、従来あまりターゲット層として重要視されていなかった大学生を対象とした玩具を開発することで、購買者数の増加が望めると考えた。
 また、玩具製作上におけるテストや評価手法として、実際に試遊した感想などから評価を行う定性的な形式が主流である。しかし、児童向け玩具ならば子供に、大人向け玩具ならば大人に試遊をしてもらっているのであれば、新たに大学生をターゲットにする際にはその世代の被験者のデータが必要になる。また、玩具が与える影響を寄り正確に捉えるためには、定量的な評価も実施するべきである。
 そこで本研究では人気玩具を被験者となる大学生に実際に遊んでもらい、その時にどの様な身体的・心理的影響を受けているのかを計測する。計測結果を定量的に評価を行い、傾向分析を行うことで、各玩具の特長となる傾向が得られ、それらを基にユーザへ適切な玩具の提案ができると考えた。玩具はストレス指標の一つである自律神経バランスを中心に傾向分析を行う。
 計測の結果、各玩具それぞれに特有の自律神経バランス、またはそれを構成する交感神経や副交感神経の変動があり、一定の傾向が得られた。また全ての玩具で、集中力が増すと呼吸が整ってリラックス状態になり、自律神経が安定するなどの共通する傾向も得られた。この結果を基に、玩具を遊ぶことで興奮したい、またはリラックスしたいなどの特定の影響を受けることを望むユーザに対し、効率的に玩具を提案できるようになることを期待している。
 しかしながら、計測結果に少なからず個人差が表れてしまうことや、玩具によっては一回遊ぶのにかかる時間が長くなるため、1 玩具あたりにかかる負担が大きいなどの問題点もあり、今後の課題として挙げられる。
市村  和輝: 環境音が与える心理的・身体的影響の分析
氏名: 市村 和輝 指導教員: 竹島 由里子 教授
 我々は常に音を聞き続けている環境で生活しており、日常的に聞こえてくる鳥の鳴き声や、雨の音など、そういったものはすべて環境音とされている。環境音とは、街の喧騒や自然の音など、音声や音楽以外の日常的な環境が発している音のことである。適度な環境音は、無音の状態よりも人間の集中力を高める効果も確認されている。環境音は、マスキング効果があり、公害として問題である騒音対策にも活用することができる。また環境音は様々な施設で利用され、安らぎを与える温泉、マッサージ施設、お化け屋敷などで恐怖を与えるための雰囲気づくりのために使用されている。
 長時間労働や業務過多問題で労働による負担が大きくなっている昨今、ストレスによる身体への影響によって作業効率の低下が予想される。そのためストレスの解消、軽減する方法が必要となってくる。この問題を踏まえ、本研究ではストレスによる作業効率の変化の有無を確認し、環境音の効果によるストレスの軽減から作業効率の上昇を図ることを目的とする。
 本研究では、生体センサを使用し、環境音とストレスの状態、および、作業効率の関係を分析する。ストレスの度合いは自律神経バランスから識別する。自律神経バランスは交感神経と副交感神経の関係から算出することができる。本研究では、椅子に座った状態でのタイピング作業を対象として、作業効率を計測する。作業効率は環境音を聞きながら行ったタイピングのスコアと自立神経バランスの数値の変化から分析する。タイピングを行うにあたって、何も聞かない状態、エアコンの音を聞いた状態、ざわざわした場所の音を聞いた状態、鳥の鳴き声を聞いた状態の4 つのケースで実験を行う。環境音は聞かせる順番によって結果に偏りを出さないようにするためランダムにした。
 本実験の結果から、環境音を聞きながらの作業の方が、何も聞かないで作業をするより、値の変動が少なく、ストレスを軽減し、リラックスした状態で作業に臨めていることが分かった。しかし、自律神経バランスとスコアの関係についての特徴が見いだせかった。個人のスコアを相対的に比較すれば環境音ごとにスコアの上昇、減少が見られたが、作業効率に関しては環境音ごとに大きく差が出ていることはなく、共通した変化を見ることができなかった。
宮里 梨紗子: ホラー要素の分類と恐怖度の可視化
氏名: 宮里 梨紗子 指導教員: 竹島 由里子 教授
 ホラーは映像ジャンルの1つとして親しまれており、動画投稿サイトでは視聴回数100 万再生を超えるものも多く存在する。また、ホラーは夏になるとテレビで特別番組を設けられるように、夏の風物詩の1 つとなっていることに加え、最近ではハローウィンの時期にホラー動画コンテストが開催されている。このように、ホラーコンテンツは盛り上がりを見せている。しかし、まだパターン化した恐怖演出などを見かけることが多く、視聴者がホラー演出に慣れてしまう可能性がある。また、恐怖の感じ方には個人差があるため、どのようなホラー要素を入れると良いのか意見を反映させるのが難しいものとなっている。これから先ホラーコンテンツを盛り上げていくには、有効なホラー演出や多くの人が恐怖を感じる動画の傾向を客観的に見つける必要があると考えられる。そこで本研究では、主観的な意見だけでなく、定量的な恐怖評価の基準を確立させ、視聴者が怖いと感じるホラー動画にはどのような特徴や演出を行っているのか分析することで、ホラーコンテンツを制作する際に必要となるポイントを導き出すことが期待できる。
 本研究では、まず、作品に出てきた場所や誰の視点で物語が展開するのかなど、詳細に分類していく。その後、ホラーに関する意識調査アンケートをとり、日常でどのような場面に恐怖を感じるのか、ホラ―作品を普段から視聴するのかなどを聞き出す。そのアンケート結果を考慮し、分類したホラー作品から6 つの研究対象とする作品を決定した。恐怖度の可視化方法としては、生理指標の計測データを用いる。計測方法としては、TDK 株式会社のSilmee Bar type Lite を使用する。Silmee Bar type Lite では、脈拍、自律神経バランスのデータを取得する。計測したデータは折れ線グラフで表した。これらの計測結果をもとに、ホラー動画を視聴した際の体の変化から作品の恐怖評価を行う。実験の結果、脈拍にはあまり変化が見られず、自律神経バランスが恐怖評価を行うのに有効だということが分かった。また、可視化結果から分析して分かったことは、現実に起こりえる内容や恐怖対象の人物がいると自律神経バランスが乱れやすいということだ。しかし課題としては、今回自律神経バランスのみで恐怖評価を行ったので、特定の恐怖が変化として現れない可能性がある。今後は、生理指標の計測項目を増やし、さまざまな生理指標の結果を取り入れていく必要がある。

情報可視化1

高橋   元: ユーザ嗜好に基づく俳句提示システムの構築
氏名: 高橋 元 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、俳句はアメリカなどの海外で注目を浴びている。その一方、日本では若者を中心に俳句に目を向けられなくなってきている。その原因として普段から俳句と触れ合う機会が少なくなってきていることと、娯楽の充実化があると思われる。日本全体としては毎年開催されている芭蕉祭をはじめとしてお~いお茶新俳句大賞などの行事も行われており、まだ衰退の一方であるとは言い難く、これからの発展に期待ができる。
 本研究の目的は俳句業界への親近感を抱いてもらうため、ユーザの好みを基にした俳句を提示するシステムを構築する。俳句の人気があまりない若い世代の人に俳句に触れてもらい知ってもらうことで、俳句業界への興味向上などの貢献が期待できる。
 今回は若者でも知っており、著名な俳人の「松尾芭蕉」の俳句をシステムに実装する。まず芭蕉俳句データベースを収集する。収集された全1066 句を季節ごと(春、夏、秋、冬)に分け、7 つのカテゴリ別(時候、天文、地理、人事、宗教、動物、植物)に分類する。それらの分類した912 句の分析を行う。季節別、カテゴリ別、それぞれの視点から分析することでより正確な情報をとらえることができた。ここまでで行った分類や分析はシステムの構築に活かされる。
 システム構築はユーザが能動的であり、嗜好に基づいた俳句を見つけ出せることや、繰り返して利用してもらい、俳句についての知識や情報を得られることを目的としている。システム構築にはJavaScript を用い、Isotope を利用してウェブで利用することができるようにする。複数のフィルタ機能とソート機能を実装することでユーザが自分の好みや興味のある分野を探しやすくした。画像を使いフィルタやソートをかけて表示することで文字や言葉でしか情報がなかった俳句を新たな方向から干渉することができるようになった。ユーザ選んでいった俳句を知ることができるページによってユーザが新たに俳句の情報を得ることで知識を身につけることができる。
 今後の展望として、年齢が若い人にアンケート調査を実施する。アンケートデータをフィードバックし、システムのUI や不満点の改善を行っていく。ユーザの嗜好により近い結果を出すためにフィルタやソートの要素を追加していくことが課題として挙げられる。また、海外の人にも利用してもらえるよう対応言語の追加も課題となっている。
東井 健次郎: 優勢・劣勢状況における将棋初心者の思考の可視化
氏名: 東井 健次郎 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、将棋は数多くの人間の目に触れる機会が多くなっている。史上最年少で七段に上がった藤井颯太七段、永世七冠の偉業を成し遂げた羽生善治棋士など、ニュースで取り上げられるほどにメディアで多く扱われている。しかし、テレビで取り扱われているのにもかかわらず将棋人口が増えることはあまりない。この理由として、初心者にとって将棋が理解困難なものであり、覚える前に断念する人が多いことが考えられる。将棋を早期に理解できるようになれば、より将棋人口が増えるはずである。以上のことを踏まえ、初心者の棋力を向上させるための手段として初心者の思考の可視化を行う。
 本研究は、マインドマップの作成、棋力のグラフ化、棋力の向上の順に行う。マインドマップは、初心者に先手有利の局面を見せて、どこを見てどのように考えたかを指で示してもらい、その映像を分析して作成する。作成したマインドマップを元に初心者の将棋に対する傾向を分析する。次に初心者に、アマチュア10 級以下のレベルのコンピュータと実際に対局をしてもらう。その対局において、悪手の数、評価値、着手にかかった秒数をグラフ化する。最後に分析した傾向を元に棋力向上を図る。棋力向上では、勝ち切れ将棋、盤面可視化による再思考を行う。勝ち切れ将棋では初心者の陥るミスなどを改善するものを用意し、盤面の可視化では悪手を指してしまった局面を可視化した状態で見せ、どのように指すかを検討してもらう。
 初心者4 人、経験者1 人を対象に作成したマインドマップから得たデータでは、駒の利きの見落としや、持ち駒を無視するといった傾向がある。次に行った棋力のグラフ化では、初心者はアマチュア10 級ほどのコンピュータには負け、それよりも棋力の低いレベルには勝利した。作成したグラフから、初心者は格上と対局した場合、悪手の数が減少し、格下と戦った場合は悪手の数は増加した。このことから、初心者は簡単な形勢判断は可能であり、優勢状態の場合は油断してしまうと分かった。棋力向上では、勝ち切れ将棋は初心者には難解な物であった。情報が多すぎた場合、初心者の思考では限界があり、棋力向上には適さないと分かった。盤面の可視化による再思考では、初心者の傾向にあった斜め駒の利きの見落としなどが可視化により改善され、考えた手は最善手の場合もあった。盤面可視化による棋力向上は初心者にとって有効であると分かった。
大澤 枝梨香: ゲームが与える心理的影響分析のためのツイート可視化
氏名: 大澤 枝梨香 指導教員: 加納 徹 助教
 近年,スマートフォンの普及に伴って,SNS (ソーシャル・ネットワーキング・サービス) の利用が増加している.SNS 利用に関する意識調査では,Twitter の利用率が最も高く,年代別に見ても各年代でTwitter が最も利用されている.Twitter の利用目的としては,「趣味に関する情報収集」が最も多い.また,Twitter は匿名で気軽にツイートすることができるため,情報の速報性が高いという特徴がある.このため,同じ趣味を持つ人とTwitter でフォローをし合い,趣味に関するツイートをするユーザは多い.さらに最近では,Twitter とゲームを連携して,ゲーム機からツイートができるゲームも登場している.これにより,ゲームの合間にハッシュタグを付けて簡単にツイートをすることが可能となっている.このため,これらのゲームに関するツイートを収集し,分析することで,ゲームをしている時の心理状況を得ることができると考えられる.
 そこで本研究では,ゲームがユーザに与える心理的影響を直感的に把握・分析するために,Twitter に投稿されたゲームに関するツイートに着目し,2 つの実験を行った.まず,「#+ゲーム名」のハッシュタグを含むツイートをゲームに関するツイートとし,取得した直近の100 件のツイートデータを曜日や時間帯,ユーザの属性ごとに分け感情値分析を行い,それらの感情の変化の傾向を円グラフや散布図から分析する実験を行った.次に,ツイートを取得する対象のゲームを6 つにし,データ数を特定の日付からの365 日分へと増やして,実験を行った.プログラムを用いて感情値分析を自動化させ,ここで得た感情値をもとに,ゲームジャンルごとの感情の変化やツイートの頻度の傾向を,散布図と折れ線グラフで可視化した.さらにこの実験では,感情値を分析する際に,熊本らの感情値解析ツールと,自然言語処理API であるGoogle のNatural Cloud Languege の2 つを比較し,Google のツールの方がより尤もらしい結果となることを確認した.これらの実験の結果,1 つ目の実験ではユーザの属性によるゲームに関するツイートの内容に異なる傾向が得られた.また,2 つ目の実験では各ゲームジャンルがユーザに与える感情の変化に異なる傾向があることが明らかになった.これらにより,ユーザは自身に起こりうる感情変化を事前に予測することが可能となり,プレイするゲームを選択する際に役立つことが考えられる.
鈴木  康平: 調理家電を対象とした企業ブランド力の可視化
氏名: 鈴木 康平 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年家電の需要は高まっている。2014 年から2017 年の3 年間右肩上がりで成長を続けており、需要が高いことが伺える。また、製品を購入する消費者の6 割弱がネットの口コミを参考に購入しており、口コミが消費者の購買決定に影響を与えている。
 ブランドは消費者が商品またはサービスを選択する際の判断材料である。現在はインターネットの普及によってブランドに対する豊富な情報を得ることが出来る。このため、ブランドは消費者の購買決定に大きく影響、高価格の維持にも関係しマーケティングにおいて重要な要素である。しかし、現状ブランド力について学問的な定義は無く、研究者によって曖昧な定義がなされている。
 本研究では、オーブントースターに注目して消費者が製品に持つ印象の分析を行った。ネットショッピングの口コミから単語を抽出、ブランド力に関連する要素を取得し複数の企業ごとに比較を行う。
 本研究は消費者が容易にブランド力を把握し、商品を購入する際、指標とすることを目標とする。ブランド力を把握する為、消費者が製品に持つ印象にまず着目した。ブランド力を構成する要素は「知覚品質」「ブランドイメージ」と設定した。消費者が製品に対する印象を分析するため、ネットショップのサイトから口コミデータを取得し、形態素解析を行った。その結果から、単語の頻出度、単語の感情値を取得。単語の頻出度と文字サイズを関連付け、単語の感情値を色に関連付けすることにより、消費者による企業に対するブランドイメージを可視化する。また可視化結果を複数の企業と比較することにより、特定の企業の強みを消費者が把握し、容易に商品やサービスの選択が出来ることが期待される。
 可視化の結果、消費者が製品に対するおおまかな印象を把握することが出来たが、意味が曖昧な単語も出力されてしまった。これは単語のみを取得し分析したため、前後の文章の意味を考慮していなかったためであると考えられる。

情報可視化2

増尾  幸奈: わかりやすいピクトグラムの特徴分析
氏名: 増尾 幸奈 指導教員: 竹島 由里子 教授
 意思疎通の手段の一つにノンバーバルコミュニケーションのピクトグラムがある。言語の制約を受けない「視覚言語」であるピクトグラムは外国人観光客や字が読めない人にとってなくてはならないものだ。そのピクトグラムは現在様々な場面で使われているが、わかりやすいピクトグラムとわかりにくいピクトグラムがあり、課題点が残っている。間違った解釈や表現対象が分からないことなどあり、ピクトグラムの目的が果たせていない。そこで本研究では、全てのピクトグラムをわかりやすいものにするために特徴を分析し、わかりやすいものとわかりにくいもののそれぞれの傾向を分析する。
 ピクトグラムは辞書的意味と派生的意味から作成されたものに分類できる。ピクトグラムが表示される形そのものを意味する場合辞書的意味であり、ピクトグラムに書かれているものから連想して意味をとらえる場合は派生的意味である。この分類をもとに、ピクトグラムを使い理解度調査アンケートを行う。そして、掲示されている場所からピクトグラムの内容を判断している可能性があるため、掲示場所を明記したアンケートと、明記していないアンケートの2 種類を実施する。
 今回実施したアンケートでは、情報が多いことから具体的にどのようなデザインが良いのか絞ることはできなかった。しかしアンケート結果から、わかりやすいピクトグラムは、見慣れているものや、辞書的意味がかなり強い(より細かくイラストで描いてある)もの、使われている場所が限られていてある程度予測ができるものであった。反対にわかりにくいピクトグラムは、辞書的意味派生的意味どちらも普段見かけないものや、辞書的意味が弱くてイラストが大雑把なものであった。
佐藤  亮介: 電車遅延状況の分析とその可視化
氏名: 佐藤 亮介 指導教員: 竹島 由里子 教授
 今現在、交通機関を利用する際、人身事故等により遅延が生じ、予定時刻を大幅に過ぎてしまうことが当たり前のようになりつつあることが問題となっている。これは、慢性している電車の遅延の日常化が原因である。また、人身事故等はいつ起こるか予想しづらいため、自分の利用する路線で遅延が発生しても驚かない人もいる。本論文では電車の遅延が特に予想しづらい人身事故を対象とした、分析結果を可視化することで、利用する線路の事故率、どの線をどの時間に乗れば遅延が少ないか等を認識できる。
 「鉄道人身事故データベース」、「JR 東日本管内の各路線の利用状況」から、人身事故に関する詳細と平均通過人員のデータを集めて分析を行う。人身事故は1380 件あり、人身事故が多い路線は中央線291 件、京浜東北線235 件、中央快速232 件と通勤利用者が多い路線である。通勤・退勤ラッシュで混雑が予想される時間帯よりも、昼の時間帯の方が人身事故が多いことが分かった。人身事故の男女比は、男性が33 %女性が16 %と、いずれの路線でも性別が分かっているものに関しては、男性が事故に遭うケースが多くみられる。各駅・路線の人身事故件数と平均通過人員を比べてみると、「東海道線」、「京浜東北線」のみ利用状況と人身事故件数の比率に大きな差があった。駅ごとの人身事故頻度をランキング化した結果、路線ごとの人身事故件数では5 位だった中央線・総武線各駅停車の新小岩駅が一番事人身故件数が多く、死亡事故も多いことが分かった。人身事故件数と死亡事故の割合を見てみると、新小岩駅と茅ケ崎駅は事故件数と死亡事故の割合が高く、八王子駅と池袋駅は低いことが明らかとなった。分析で得た情報を元に、draw.io を使って可視化結果を表示する。東京近郊の路線図を作り、人身事故頻度の高い駅、路線に警告表示を反映させる。可視化した結果、人身事故件数の多い駅は大きい駅にほとんど集中しており、警告度は京浜東北線と東海道線が非常に高い数値となった。
 本研究では制作した路線図を実際に使用したあとのデータをとっておらず、電車の遅延に対する利便性を証明するには不十分である。よってアンケートを取り改善案を募ることで、より利用者にとって便利となるものにできると考える。しかし、対象路線は絞っているが、人身事故のが起こりやすい駅・路線の特定と、人身事故の時間的傾向についての言及、対応策としての路線図の作成と分析結果の可視化までできたことが、大きな成果と考える。
胡   京輝: 大都市圏における人口移動の可視化
氏名: 胡 京輝 指導教員: 竹島 由里子 教授
 近年、日本では高齢化が問題となっている、特に、大都市圏と比べて人口が減少傾向にある地方では、少子高齢化が加速している。この現象の原因として、地方から大都市圏への労働人口の移動が挙げられる。労働人口が不足している地方は、経済力が落ち、人口だけでなく企業の数も減少していると考えられる。また、日本は地震と津波が多いため、災害の発生に伴い、被災地からその他の地域に人口が移動することがある。転出先としては、地方よりも、経済的な魅力の大きい大都市圏が選ばれることが多い。これらの要因により、人口が大都市圏に集中する傾向が見られている。
 人口移動に関する研究は、グラフや数値で人口移動を表示するものが多い。その利点は、数値が具体的かつ正確であることである。しかし、これらグラフや数値から人口移動の原因を求める時は、データの分析に時間と労力がかかってしまう。
 そこで本研究では、人口移動のデータを収集・整理し、人口移動の可視化を行う。人口移動可視化には、大きく二つの方法が考えられる。一つは、一般的なグラフなどを用いた可視化である。グラフでの可視化は、数値の変化が見た目ですぐにわかることに加えて、グラフ上に具体的な数値を載せることもできるが、可視化の対象が多くなると、分析が困難になる。もう一つ可視化手法は、地図上への可視化である。
 本研究では、地方から大都市圏の人口移動の現状を直感的に把握するため、三次元地図上への可視化システムを開発する。プログラムを使用して、ユーザーが指定している複数の区間における人口の転出量または転入量のデータを、三次元の地図上で線や粒子を用いた表示を行う。本システムを利用することで、人口推移の把握がより容易になり、人口移動の原因解明の参考にもなる。また、地域にいる人口と企業の割合を分析することで、今後の展開予測や、企業の営業方針を決めることも可能となり、商業経営や地域振興、地方産業の活性化などへの貢献が期待される。
西川  茉優: 北極域における海洋状況と魚介類生息域の可視化
氏名: 西川 茉優 指導教員: 竹島 由里子 教授
 北極圏及びその周辺は北極域と呼ばれ, 世界的な問題として重視されている地球温暖化の影響を, もっとも受けている地域である. 海氷面は, 海水面に比べて太陽光の反射率が大きいため, 海氷面が占める範囲が広いほど, 太陽エネルギーによる温度上昇の影響が小さくなる. また, 海氷が海面を覆うことにより, 海水から大気への熱輸送が遮断される. この2 点から, 気温が上がって海氷が融解すると, 太陽光のにより海水温度が上昇し, 大気への熱輸送が増加してしまい, ますます気温が上昇するという現象が生まれている. 実際, 北極の海では, 海面温度が上昇しており, 生態系への影響が出始めている. そこで, 北極域どのように地球温暖化の影響を受けているのかを理解するためには, 北極域の環境変化を解析する必要がある. しかし, 海洋状況の分析は広く行われているが, 海洋状況に加えて漁獲量などのデータを複合的に可視化した事例はほとんど存在しない.
 そこで本研究では, 北極域における, 海洋状況と魚介類漁獲量の経年変化を同時に可視化する. これにより, 北極域の魚の生息域がどのように変わったのかを調査し, 総合的に地球温暖化の影響について分析する. 可視化方法として, 3 通りの可視化方法を行う. まず, 個々の項目の値がどのように分布しているかを調べるために, 地図上にそれぞれの値を円でプロットする. 円の色を数値に対応させることにより, 色から数値の情報をよみとれるようにする. 次に, 漁獲量とその他の項目との関連性を調べるために, CPUE 値とそれぞれの項目を同一地図上に重畳可視化する. 最後に, 各魚介類の生息域を調べるために, CPUE 値の3 次元可視化を行う.
 本研究により, 海面温度が急激に変動している傾向がみられ, 環境が安定していないことがわかった. また, 海面温度により漁獲量が変化することから, それぞれの魚が生息しやすい海面温度が存在することが考えられる. このことから, 地球温暖化によって海面温度が上昇すると, 魚の生息域が変化していくことが考えられる. また, 海氷濃度と魚の生息域の関連性はみて取られなかったが, 年々海氷範囲が少なくなってきていることから, 地球温暖化問題に多大な影響を与えていると考えられる. 今回の結果から今後の北極域の海状況と魚介類の生息域についての情報をより詳しく示すことができ, 地球温暖化問題への改善につながることが期待される.


2017年度

情報可視化・分析

庵原 慎太郎: SNSにおけるペット飼い主の感情変化の分析
氏名: 庵原 慎太郎 指導教員: 加納 徹 助教
 近年、アニマルセラピーがストレスを軽減させたり、自信をつけさせたり、心の病の治療として一定の効果を上げている。アニマルセラピーとは、動物と触れ合うことで心や体の調子を改善させる治療法の一種である。自宅でペットと触れ合い癒された、公園で野生動物や野鳥を見て癒やされた、などもアニマルセラピーに含まれる。一方で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) の普及により、自分のペットの様子をアップロードしたり、同じ動物を飼っている人と情報交換をしたりすることが容易にできるようになってきた。SNS とは、インターネット上でユーザー同士が相互的に情報を交換、共有することができるサービスの総称である。中でもTwitter は、匿名でツイートと呼ばれる140 字以内の文字情報の発信・取得ができるため気軽に利用しやすく、日本国内で最も普及しているSNS である。そこで本研究ではアニマルセラピーにおいてペットが飼い主に与える癒しの効果を検証するために、Twitter からペットに関するツイートを収集し、感情分析を行う。まずペットの飼育を始めたと思われるツイートを抽出し、そのツイートを含めた前後約半年分のツイートを感情分析にかけ、算出した感情値をグラフにする。長期的なものと短期的なものを比較するために、飼育開始日を中心に、1 年のグラフと2 ヶ月のグラフを作成する。そして、各グラフに対して回帰分析をすることで、感情値が増加傾向にあるのか減少傾向にあるのか調査する。飼育前と飼育後の傾きの違いも比較対象にする。さらに、1 ヶ月ごとの感情値の変化量から長期的なものと短期的な違いを比較する。対象としたのは犬の飼い主10 件、猫の飼い主10 件、うさぎの飼い主10 件である。結果的には、ペットの飼育によって急激な感情の変化をした飼い主は少なかった。わずかではあるが、ペットの飼育による感情の変化は、長期的には小さくなる傾向が見られた。また、1ヶ月ごとの感情値の変化量を見ると、アニマルセラピーによる癒しの効果は短期的に大きくなり、同時にペットの飼育によってストレスも生じる可能性が考えられる。
今井   樹: 剣道試合の間合いの可視化
氏名: 今井 樹 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 No data.
吉澤 晃太朗: スピーチスタイルによる聴衆の興奮度変化の可視化
氏名: 吉澤 晃太朗 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 スピーチコンテストや大統領演説,Apple 社の新商品発表会,結婚式など,用途や目的は違うが,多種多様な場面でスピーチは行われている.スピーチで必要とされる話し方は,場面や目的に応じて変化するが,良いとされるスピーチには一定の共通項がある.一般的にスピーチに適しているとされる話し方は,緩急をつけつつ,適切な間を取りながら,声の高低などで抑揚をつけて,大きな声で話すというものである.しかし,真にいいスピーチであるかを判断するには,スピーチをしている人だけでなく,それを聞いている聴衆の反応も調べる必要がある.音声に関する研究は多く行われているが,スピーチの話し方とそれを聞いた聴衆の反応の相関に関する研究は存在しない.そこで本研究では,聴衆の反応が顕著である米大統領のスピーチを対象に,話し方と聴衆の興奮度の両方の変化に着目して分析する.話者の抑揚や速さ,声の大きさといった特徴と,聴衆の出す音の高低と大きさを同時間軸上に可視化することにより,聴衆の盛り上がりとスピーチの話し方の関係性が明らかになる.さらに,さまざまなスピーチの可視化結果を比較分析することで,良いとされるスピーチの共通点の獲得,および聴衆の心を惹きつける話し方の解明が期待される.
 本研究では,米国ニュースサイトが提供している大統領演説動画の音源を利用し,スピーチのテンポ,音の高低,音量,聴衆の音の高低,音量を抽出し,可視化した.可視化結果から,一定の音量でテンポや声の高さに差をつくると聴衆が反応を示しやすくなることが確認された.また,比較分析した結果,聴衆の反応は間がある部分に集中しており,一般的に良いとされる話し方に加え,テンポが速いほど,音の高低差が大きいほど,聴衆の反応が良い傾向がわかった.また,音量や声の高低に変化がなくても,一定の細かい間を取ることで,独特なリズムが生まれ,聴衆の反応が生じやすくなることや,音量が徐々に上がるような話し方をしている箇所では,声の高低にあまり差が見られなくても,聴衆の反応が良くなることがわかった.本研究により,聴衆が強く反応する話し方の傾向が得られた.この傾向に基づいたスピーチの話し方を学習することで,話者のスピーチ能力の向上が期待される.

ユーザ支援

兼古  将汰: 楽曲特徴を考慮した音楽の画像化と選択システムの開発
氏名: 兼古 将汰 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年,音楽のデジタル化に伴い,大量の音楽を様々な媒体で持ち運ぶことが可能になっている.また,Apple Music やSpotify などの音楽配信サービスを利用することにより,クラウド上にある楽曲をストリーミングで聴くことも可能である.しかし,大量の楽曲が存在するため,全ての楽曲の情報を把握し,好みの楽曲を探すことは容易ではない.好みの楽曲を見つけるためには,他者から情報を得たり,楽曲名,アーティスト名,アルバム名,歌詞などのメタ情報から検索するなどの手段が用いられている.しかし,自分の知っている楽曲やアーティストの範囲を自主的に広げない限り,新しい楽曲を聴き始めるきっかけを掴むことは難しい.このことから,大量の楽曲の中から好みの曲を探すことや,新たな楽曲に触れるためには,メタ情報以外の選曲手法が必要であると考えられる.
 本研究では,より直感的に選曲が行えるように楽曲の感情や雰囲気に着目し,楽曲の印象をもとに選曲できるシステムの開発を行う.まず,各楽曲をテンポに基づいて色情報に変換する.そして,歌詞から得られる印象を,形態素解析によって抽出された語句からテーマに分類し,アイコンで表現する.これらの要素を組み合わせて楽曲を画像化し,楽曲の雰囲気やイメージをユーザーに連想させ,直感的に楽曲の選択を可能にする.システムは,ユーザーが選択した色とテーマアイコンから,特定のテンポやテーマを持つ楽曲を抽出し,それらをランダムに再生する.
 システムの有用性や操作性を確かめるためユーザーテストを実施した.その結果,生成した画像に関しては半数が楽曲のイメージに適していると回答したが,残りの半数はどちらとも言えないという回答であったため,改善が必要であると考えられる.しかし,色とテーマアイコンを選択する選曲方法が有効であると評価された.これらのことにより,本システムの選曲方法は楽曲のメタ情報を用いず,直感的に選曲が行える新たな方法として有用であると考えられる.
鈴木  浩平: 力覚装置を用いたキャラクタ描画練習支援システムの開発
氏名: 鈴木 浩平 指導教員: 加納 徹 助教
 近年、スマートフォンや携帯型ゲーム機を用いて電子機器上に絵を描いたり、タブレット端末を利用して文字を学習するなど、デジタル技術を利用したさまざまな学習支援システムの開発が行われている。中には、力覚装置を用いた動作誘導による文字の練習システムも提案されており、高い練習効果が確認されている。力覚装置を絵の練習支援に応用したプロトタイプも提案されているが、描画支援システムとしては十分に確立されていない。本プロトタイプは、描画の際に絵の線上に沿って誘導する力と、線からはみ出した際に線上に戻す力を力覚装置により実現することで、描画の練習支援を行うというものである。しかし、誘導と制御は円、楕円、円弧に対してのみ適用可能であったため、描画支援が可能な対象が限られてしまう問題があった。
 そこで本研究では、任意のキャラクタ画像を対象とした、力覚装置による描画練習支援システムを提案する。力覚装置には、Geomagic 社のGeomagic Touch を使用する。本提案システムでは、描画練習を行う対象画像を2 値化させ、輪郭などの誘導に必要な線のベクトル情報と座標情報を抽出する。その情報を元にベジェ曲線化を行い、力覚装置を用いて誘導および制御を行う。誘導においては、ベジェ曲線化した線に沿って、力覚装置のスタイラスに進行方向に向かう力を与える。制御においては、ベジェ曲線化した線の座標を用いて、スタイラスがベジェ曲線から大きく離れないような力を与える。このとき、スタイラスとベジェ曲線の距離が遠いほど、線上に戻す力を線形に大きくする。2種類の力を利用することで、任意のイラストやキャラクタに対応可能な、汎用性の高い描画練習支援を行えることが期待される。
 今回、用意したキャラクタ画像を読み込ませ、ベジェ曲線に沿って誘導・制御を行うシステムを実装した。そして、「誘導・制御あり」で練習を行うグループ、「誘導・制御なし」で練習を行うグループに分け、描画練習を行ってもらい、練習効果を比較した。評価は、描画結果が手本画像とどれだけ類似しているかを数値化する定量的評価と、アンケートによる主観的評価の2 種類を行った。実験の結果、いずれのグループもほぼ数値が向上しているものの、定量的評価では練習方法の違いによる上達効果の有意な差異は確認できなかった。しかし、主観的評価では「誘導・制御なし」の練習を行った描画結果より、「誘導・制御あり」の練習を行った描画結果のほうが練習前より手本に類似していると答えた割合が高かった。このことから、「誘導・制御あり」の練習のほうが「誘導・制御なし」の練習よりも上達効果がある可能性が示唆された。


2016年度

情報可視化

桑原 洋次郎: 複数要因を考慮したハザードマップの作成
氏名: 桑原 洋次郎 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 日本は地震や津波、火山噴火、土砂災害、竜巻など、世界的に見ても自然災害が多く発生している地域の1 つである。このような自然災害の対策には、被災想定区域を視覚的に把握できるハザードマップが有効である。ハザードマップとは災害によって生じる被害を予測し、その被害範囲を地図上に視覚化したものである。近年ではインターネットの普及に伴い、紙面ではなく電子化されたハザードマップも増え、Web サイト上で公開されるなど、時代に合わせて形を変えている。一方、現代の日本は犯罪や事故が絶えないこともあり、犯罪や事故を扱っているハザードマップも作成されている。しかし、災害と犯罪、事故などを同時に確認できるものはまだ存在していない。ユーザが関心のある危険因子のみを同時に可視化することができれば、居住地の探索や旅行地の選択など、よりさまざまな状況に対応可能なハザードマップになることが考えられる。さらに、要因間の相関関係の発見などにも繋がることが期待される。
 そこで本研究では、災害だけでなく犯罪や事故にも焦点を当てた、複数要因を考慮したハザードマップを提案する。まず、災害と犯罪、事故の発生件数を、項目別・地域別に収集する。これらの数値データは、気象庁・警視庁が一般公開をしている情報を利用する。可視化表現には、地図情報データを誰でも利用できるよう設計されたシステムであるOpenStreetMap (OSM)と、OSM 上に円グラフとアイコンを階層的に表示可能なライブラリであるMarkercluster pie charts を利用する。次に、要因の組み合わせを選択し、ユーザの欲しい情報だけを表示可能なフィルタ機能を実装する。今回は、神奈川県に限定してシステムの開発を行った。本システムにより、神奈川県の各地域における災害・犯罪・事故の発生件数や発生割合が、視覚的にわかりやすく比較することが可能になった。また、事故や災害など、複数の要因の発生件数が少ない地域の探索に有効利用可能であることが確認された。
小林  恭汰: 政治資金の流れの可視化
氏名: 小林 恭汰 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年,さまざまな分野で情報の公開が行われるようになってきた.平成11 年度には行政機関の保有する情報の公開に関する法律が施行され,行政機関や政治団体が所有する情報もwebページなどで広く公開されている.中でも,政治資金の運用については人々の関心も深く,ここ数年その使途に関する問題が数多く取り上げられている.公開されている情報から政治資金の使途について調べることは可能であるものの,データの中には手書き資料を画像化しただけのものも多く,それらの情報をコンピュータ上で精査するのは大変困難である.
 そこで本研究では,これらの問題を解決するために,手書き資料をデジタル化し,そのデータに基づいて政治資金の流れを視覚的に表現する方法を提案する.これにより,政治資金の使途をより明確にし,不正利用や無駄遣いを視覚的に発見しやすくなることが期待できる.はじめにWeb 上で公開されている政治資金収支報告書を,二次利用可能な形式でデジタル化する. 政治資金の流れを視覚的に表現するにあたり,複数項目間の関連性が表現可能なネットワークグラフが有効であると考え,汎用情報可視化ソフトウェアであるTableau を使用して可視化する.具体的には,団体をノードとして,資金の受け渡しをリンクとして表現する.ここで,支出額に応じて,ノードのサイズを変化させる.また,一般的に政治資金は,中核となる党本部から各支部,部局へと流れていくため,それぞれの団体の階層に応じてノードの色付けを行う.ネットワークグラフでは,ノードの配置問題が重要な課題であるが,本研究では,親団体を中心とした円状となるように子団体を自動的に配置する.本研究の有効性を調べるために,同一のデータを使用して,水平棒グラフやツリーマップ,パックバブルなどのグラフを用いて可視化した結果との比較を行った.その結果,政治資金の流れを可視化する際には,ネットワークグラフが最も視認性に優れていることがわかった.これにより,政党の政治資金の流れ全体を一括して可視化することが可能となり,より直感的に政治資金の流れを理解できると考えられる.
翠川  望美: 歌詞と楽曲特徴に基づく音楽の可視化
氏名: 翠川 望美 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年,音楽のデジタル化に伴い,携帯音楽プレイヤーなどで大量の音楽を持ち歩くことができるようになった.また,音楽配信サービスも登場し,多様な音楽に触れ合う機会が増えた.一方で,個人が所有できる楽曲数が増加したことにより,大量の楽曲の中からユーザの気分や好みに合った楽曲を選ぶことが困難になってきている.ユーザは曲名,アーティスト名,歌詞などのメタ情報をもとに楽曲を検索する場合が多いが,これらのメタ情報だけでは実際に聴いてみるまで楽曲の旋律や曲調を把握できないため,選曲に時間がかかる.このことから,メタ情報以外での直感的な選曲手法が期待されている.短時間で楽曲の内容を把握でき,効率の良い選曲を支援する手段としては,画像で音楽情報を表現する「可視化」が有用であると考えられる.メタ情報以外での選曲手法としては,楽曲特徴量に基づいて楽曲を可視化し,選曲する手法が提案されている.しかし,楽曲特徴量だけでは曲の持つ雰囲気を表現することはできても,歌詞の内容を表現することはできず,曲の全体像を知る手がかりとしては不十分である.楽曲特徴量だけでなく歌詞を考慮した選曲手法も提案されているが,選択できるアイコンの種類が少ないため,テンポや高音域の割合等の細かい曲調の違いを表現できないという問題がある.
 そこで本研究では,歌詞と楽曲特徴量の両方に着目した楽曲の可視化を考える.本手法ではまず,歌詞情報を取得する.続いて,取得した歌詞に対して形態素解析を行い,頻出単語で歌詞のテーマを決定し,そのテーマに合う画像を選択する.続いて,テンポと高音域の割合の2 つの楽曲特徴量を各楽曲から抽出する.そして,抽出した楽曲特徴量の値に応じて,画像の彩度と明度を変更する.最後に,彩度と明度を変えた画像をテーマごとに階層的に一覧表示する.このように,歌詞の形態素解析結果と楽曲特徴量に基づき,直感的に楽曲を理解できる画像を作成することで,大量の楽曲からの選曲が容易に行えるようになる.
 今回,日本語の楽曲を用いてシステムを作成し,ユーザテストを行った.その結果,画像から歌詞の内容や曲の持つ雰囲気を推測することができ,ユーザの好みや気分に合った曲を探すことができるということが確認された.このことから,大量の楽曲からの選曲時においても,本システムは有用であると考えられる.
吉田  果穂: 購入経路短縮のための配置提案システムの作成
氏名: 吉田 果穂 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 現在、日本の至る所にコンビニエンスストアが存在している。来客数や客層など、地域によってその特色はさまざまである。また、1 日の来客数が数千人規模に上る店舗もあり、混雑の緩和が重要な課題の1 つとなっている。店舗が混雑する要因として、店舗内での顧客の滞留が挙げられる。滞留の原因として考えられるのは、レジの回転率の悪さや、商品の配置の問題などがある。店舗内混雑の問題は、コンビニエンスストア本部でも全体としての対策を講じてはいるが、各店舗の客層や立地等に応じた対策は取られていないのが現状である。効果的に混雑を解消する方法としては、導線の短縮が考えられる。そこで本研究では、購入経路を考慮した配置転換シミュレータを提案する。本シミュレータでは、各店舗に応じた商品棚の配置を実現するために、任意の場所に商品棚を配置できるようにしている。また、購入データから、同時に購入されている商品の組み合わせを抽出し、店舗図上に導線を描画する。このとき、導線の太さおよび色は購入頻度に応じて変化させる。数の多い組み合わせでは赤く太い導線、数の少ない組み合わせは青く細い導線を描画する。また、商品棚の交換を行うと、導線もそれに合わせて変化する機能を実装する。
 提案システムを用い、3 種類の配置でシミュレーションを行った。よく売れる商品をレジの横に並べる配置、店舗の突き当たりの壁際に並べる配置、レジから最も遠い壁際に並べる配置の3種類で、レジの横に並べる配置では、レジ、入り口、よく売れるものが密集し、導線を短くするという目標を最も満たす結果となった。しかし、レジや入り口付近に人が集中してしまい、出入りの邪魔になる可能性があるので、混雑の解消に最適とはいい難い。突き当たりの壁際に並べる配置は、店舗全体に購入頻度の高い組み合わせの導線が散らばる傾向がみられた。レジから最も遠い壁際に並べる配置では、商品がレジと入り口から遠くなってはいるものの、購入頻度の高い組み合わせは近くに配置され、来店客の導線が重なり合うという問題が避けられている。この結果から、よく売れる商品をレジから最も遠い壁際に並べる配置であれば、店内の混雑は解消されると考えられる。また、本システムにより、店舗の状況に応じた商品棚配置のための有効な知見が得られることが期待できる。

SNS の可視化

菅野  遥菜: Twitterにおけるテレビ番組の実況ツイートの可視化
氏名: 菅野 遥菜 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の急速な普及に伴い,Twitter やFacebook などの利用者が増えている.特に,Twitter においては,日本国内だけでも月に10億ものツイート数があり,気軽に身の周りで起こった出来事をつぶやくことが出来る.同時に,Twitter の活用法も多種多様になってきており,映画の告知やニュースなどの情報をTwitterから得ることも容易になっている.中でも,テレビ番組についての利用が増えており,番組の感想やセリフなどを実況ツイートし,同じ番組を見ている視聴者同士で感想を共有して楽しむユーザが増加している.実際,視聴率や番組を盛り上げるために,SNS 連動の番組企画も多数実施されている.また,生放送中に視聴者のツイートを表示する番組もあり,視聴者の反応の把握において,SNS は無視できない領域になってきている.このことから,Twitter は視聴者の反応や意見を把握するのに有用であり,視聴率からは把握出来ない視聴者の感情の変化を捉えることが出来ると考えられる.
 そこで本研究では,視聴者だけでなく,番組作成者も容易に番組の反応や評価を把握することが出来る可視化システムMozuk を提案する.本システムでは,Twitter における番組評価を容易に把握するために,「ハッシュタグ+ 番組名」を付加した実況ツイートを時間帯別に取得し,感情分析を行う.さらに,ツイートの中でより多く使用されていた単語を抽出し,その頻出度と感情の変化を可視化する.
 本研究の有効性を検証するために,地上波映画番組「超高速!参勤交代」,テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」,連続テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の3 種類の番組の可視化を行い,アンケートを行った.その結果,番組を視聴したしていないに関わらず,多くのユーザが視聴者の評価の把握ができると回答した.このことから,本提案システムMozuk は視聴者の評価の把握において,有効であることが確認された.
 しかし,対象となる番組を視聴していないユーザの中には,特定の番組において,視聴者の評価が把握できないという回答をした人もいた.これは,ツイートから抽出したキーワードに固有名詞や名詞が多く含まれてしまい,感情を表す単語が少なかったためであると考えられる.
桑原 弘太郎: 精神疾患発症の原因究明を目指したツイートの感情解析
氏名: 桑原 弘太郎 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年、スマートフォンの普及に伴い,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) などのソーシャルメディアの利用者が増加している.中でもTwitter は2016 年9 月時点でアクティブユーザ数が4000 万人に上っており,マスメディアが一般のTwitter 投稿を事件や事故の最新情報として扱うなど,Twitter の利用方法が拡大されつつある.その他にも,日常生活で感じる不安や孤独感などのネガティブな心情を吐き出す場や,ストレス発散の場としても使
われている.
 一方,近年増えてきているのが,過度なストレス等によって引き起こされる「うつ病」などの精神疾患である.仕事のストレス,過労からうつ病になり,自殺にまで追い込まれてしまうケースも増えてきており,「過労自殺」が社会問題になりつつある.この自殺の背景にはうつ病の影響が大きいと言われており,自殺とうつ病には深い関係があると考えられている.実際に自殺者の中には,自分が今置かれている状況や,ネガティブな心情を,自殺の前にTwitter などのSNS で投稿していたという例が存在している.このような心情を表す投稿を解析することができれば,診断を受けていないユーザー個人のうつ傾向を推定できることが考えられる.すでにSNS からうつ病を推定する研究は存在しているが,単語の出現頻度のみに注目しているため,投稿内容の感情は考慮されていない.
 そこで本研究では,「うつ病」を中心にTwitter でつぶやかれているツイートの感情を分析する.まず,ツイートを収集し,ツールを用いて形態素解析と感情値解析を行う.感情値解析に用いる感情辞書は,うつ病患者がツイートで利用する頻度の高い単語を抽出し,その単語に対する印象を「ポジティブ⇔ネガティブ」,「冷静⇔焦燥」の2 軸で調査することで拡張する.そして,解析を行ったデータを統計分析することで,うつ病などの精神疾患にかかっているユーザーとそうでないユーザーのツイートの傾向を比較する.今回,「うつ病」,「双極性障害」,「一般」に分けてツイートを収集し,解析を行った.その結果,一般に比べ,うつ病患者は2 軸において,相関係数や,ばらつきが大きい等の傾向が観察され,本手法はうつ傾向の推定に有効であることが示唆された.
柳田  風汰: SNSにおける恋愛動向の可視化
氏名: 柳田 風汰 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS) の普及により、すべての利用者がさまざまな情報を発信できるようになってきた。SNS では、ユーザ個人に関する出来事が投稿されることが多いため、その投稿から、各ユーザがどのような生活をしているか、どのような思考を持ち合わせているかなどを知ることができる。特に、若者の中には、個人の恋愛に関する投稿が多く見られ、恋愛対象者との出来事や、それに関する感情などを詳細に投稿する人も少なくない。そのため、これらの投稿の感情変化を捉えることで、投稿者の恋愛に対する満足度を把握できると考えられる。
 そこで本研究では、SNS 上の投稿から感情値を算出し、それらを視覚的に表現することにより、容易に恋愛に対する満足度を把握できるシステムを提案する。感情値とは、ポジティブな文章か、ネガティブな文章かを表現する値である。感情値の算出には、形態素解析エンジンと、感情値辞書を利用する。まず、Google Apps Script を用い、Twitter から恋愛に関する投稿を収集する。学習用データとして対象者は恋愛をしている、毎日投稿している、女性であるという条件を満たすユーザを選出した。それぞれのユーザを、主観的に判断し、恋愛に対する満足度が高いグループ、低いグループ、どちらでもないグループの3 種類に分類する。次に感情値辞書を利用して各投稿の感情値を算出し、グラフ化する。各グループのごとに感情値の標準偏差を計算することにより、満足度と感情値の変動パターンの関係性を調べる。解析の結果、標準偏差が1.41 よりも高く平均的にネガティブ寄りであると恋愛に対する満足度が低く、標準偏差が0.28 よりも低く平均的にポジティブ寄りであると恋愛に対する満足度が高いことが判明した。また同様の条件をもつ別のユーザの投稿90 日分を分析した。その結果同様の傾向が確認され、本システムの有効性が示された。本研究により、テキストで投稿された文章の感情値を可視化することで、投稿者の恋愛に対する満足度を把握でき、今後の関係性を判断する1つの指標を提示可能になることが期待される。

Virtual Reality

青山  麗実: 力覚装置を用いた描画スキル向上支援システムの開発
氏名: 青山 麗実 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年、デジタルデバイスの普及により、デバイス上で文字や絵を描くことが一般的に行われるようになってきた。デジタルデバイスでは、作業の取り消しや、繰り返しが容易に行えることなどから、文字や絵画の学習環境としての利用も増えてきた。一般的には、手本を描画空間に表示し、それをなぞりながら学習していく方法が広く用いられている。その他にも、力覚装置を用いて動作誘導をすることで、運筆の学習支援をする研究がいくつかなされている。運筆の練習では、誘導されながら練習を行うことで、効果が得られたという報告もある。一方、絵画の描画においては、力覚装置を用いた学習支援システムの研究は行われていない。磁力や振動によってペンを誘導するシステムを開発し、描画を支援しようという研究はあるが、誘導の正確性に欠けていたり、曲線に沿った誘導が困難である問題が残されている。
 そこで本論文では、力覚装置を用いて描画スキルの向上支援をするシステムを提案する。力覚装置には、汎用デバイスであるGeomagic Touch を利用する。本提案システムではまず、学習対象とする画像を用意し、描画の開始点や描画方向などの情報を抽出する。その情報をもとに、力覚装置を用いて誘導および制御を行う。誘導においては、描画方向に沿って、スタイラスに進行方向の力を与える。制御においては、抽出した情報をもとに、スタイラスが描画線から大きく離れないような力を与える。このとき、スタイラスと描画線の距離が遠いほど、描画線上に戻す力を線形に大きくする。
 今回、学習対象として基本図形(円、楕円、円弧) の組み合わせで表現可能な画像を用意し、基本図形に沿って誘導/制御を行うシステムを実装した。そして、誘導を行うグループ、制御を行うグループ、誘導も制御も行わないグループに分け、円の描画と、キャラクタの描画、2種類の実験を行い、学習効果を比較した。円の評価は真円度を数値化することで、キャラクタの評価はパーツごとに算出した手本からのずれの平均距離、および真円度を数値化することで行った。円は、誘導/制御を行ったグループで効果が得られた。キャラクタは、ずれの評価では、ユーザに依存するという結果に、真円度の評価では、制御を行うことで効果があるという結果となった。以上のことから、本提案システムによる支援で、描画スキルの向上が見込める
と考えられる。
森田  雅也: 力覚デバイスを用いたVR環境下における調理トレーニング支援
氏名: 森田 雅也 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年、仮想現実を構築するVR 技術の著しい発展に伴い、様々なVR 関連の研究が盛んに行われている。エンターテインメントや医療、教育など、多くはゲームやトレーニングの一環として利用されており、VR 技術の利用は様々な分野でその有用性を証明している。
 一方、様々な料理があふれる現代において、その調理方法は多種多様であり、その調理工程も同様である。食材を適切な大きさに切る、野菜や果物だったら皮をむく、生ものであればしっかりと火が通るように焼く、などといったように、それぞれの料理に適した調理方法がある。しかし、例えば、ただ包丁を用いて切る工程ひとつとっても、包丁の握り方や構え方、動かし方、食材の持ち方など、素材の味や形を決める要素はいくつも存在する。
 初めて料理するものに関しては、料理番組を見たり、レシピ本を読んだりと調理の練習を行う方法は多々あるが、コツや技術を要する難易度の高い調理法ほど、見るだけでは習得することが困難である。しかし、例えば、直感的な操作が可能なVR技術を利用すれば、難易度の高い調理方法を感覚的に習得することができるのではないかと考えた。
 本研究では、VR 利用を目指した食品の三次元表現を行った。X 線CT 装置を利用し、今回は食品の魚をCT スキャンし、生成されたCT 画像データを基にボリュームレンダリングを行い、三次元モデルを作成した。また、キーイベントプログラムを用いて、擬似的に魚の三枚おろしを手順に則り実行した。三次元モデルのリアリティ性向上のために、生成したボリュームモデルに着色加工を施し、ボリュームモデルでは表現することが困難な物体の表面の質感を表現するために、サーフェスレンダリングを行った。
 本研究では、CT 画像を基にした、食品の可視化及びモデル操作を行ったが、今後、VR 技術を組み合わせることで、実際の調理のような臨場感を提示した上で、ユーザの調理技術の発展につながる調理支援システムの開発に役立てることができると考える。
阿部  吉範: VRを用いた移動ルート事前学習システムの開発
氏名: 阿部 吉範 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 近年、目的地までの移動経路を調べるために、Google マップなどの地図アプリが広く使用されている。地図アプリでは、2 次元画像が利用されているため、移動経路は分かるものの、現地の鮮明なイメージをもつことは難しいという問題点がある。この問題を解決するものとして、ストリートビューや、Google earth などの実写画像を利用したものが挙げられる。しかし、これらのアプリでは、静止画を合成して3 次元空間にマッピングしているため、シームレスな移動を体験することができない。また、個々の施設内の移動に関しては、ほとんどサポートされていないのが現状である。これらの観点から、特に土地勘のない人だと、地図アプリやGoogle Earth では、目的地にたどり着くのが難しいなどの問題点がある。そこで本研究では、VR (Virtual Reality: 人工現実) 上で移動経路を事前に学習するシステムを提案する。具体的には、全方位カメラで撮影した動画を地図と対応付け、3 次元空間上にマッピングする。また、Oculus 社のヘッドマウントディスプレイOculus Rift を利用することにより、仮想空間内への没入感を高め、現実世界と同様の景色を体感できるようにする。動画の撮影は、直線区間ごとに区切って行うことで、さまざまなルートの構築を実現する。経路を学習するための工夫として、現在地を示す地図を小さく表示することにより、被験者に多くの情報を与えるようにしている。また、移動方向を示す矢印を分岐点で表示する。今回、実際に東京工科大の学内を全方位カメラで撮影し、システムの実装を行った。本提案システムにより、大学敷地内における移動ルートの事前学習が可能となった。VR を用いることで、従来のアプリよりも効果的に移動ルートを学習可能になったものと考えられる。また、本システムは、屋内や駅構内など、ルートの事前確認が困難なケースへの応用も期待される。
田野倉 愛美: 非定常流れ場のハプタイゼーション
氏名: 田野倉 愛美 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 航空機の離発着の際、機体後方には主に翼端渦から成る乱気流が発生する。これは、後方乱気流と呼ばれ、停滞している乱気流に後続機が巻き込まれてしまうと、甚大な被害が発生する。現在は、離発着には一定の時間間隔が設けられているが、気象条件などにより、滑走路上に後方乱気流が滞在する時間は異なってくる。このため、その挙動に応じて適応的に離発着間隔を制御することで、より安全かつ効率的な空港運用が可能になると考えられる。後方乱気流の挙動を解析する試みとしては、計測データを数値シミュレーションにフィードバックさせ、誤差を緩和する、計測融合シミュレーションがなされている。このとき、数値データの解析には視覚化が広く用いられている。しかし流動場のデータは、流速、流量、圧力など、複数の値を持つ多変量なものであり、視覚化のみでは一度に解析者に提示できる情報量に限界がある。また、多くの情報を提示しようとすると、かえって理解が困難になるなどの問題がある。また、一般的な2次元ディスプレイに描画結果を投影するため、3次元データの奥行き情報をとらえるためには、回転や移動などの対話的な操作が必要不可欠である。一方、バーチャルリアリティの分野では視覚化のみでなく、力覚化の試みもなされている。力覚化は、位置検出や力覚フィードバックといった解析者とのインタラクションを伴うものであり、データのより直感的な理解を可能とする。
 そこで本研究では、非定常流れ場の時系列データの直感的な解析を実現するために、後方乱気流の計測融合シミュレーションデータを3次元的に力覚化する手法を提案する。提案手法は、より効果的なリアライゼーションが行えるよう、視覚化には流線表示を用い、力覚化では、スタイラスを流れ方向に移動させることによって、流跡線を表現する。力覚デバイスは3次元的な動作と結果の提示が可能であり、これは3次元のデータの表現をする上で大きな利点となる。また、力覚化を視覚化と同時に行うことによって、解析者は多くの情報をより直感的に理解することができると考えられる。

Scientific Visualization & CG

鶴見  沙織: 科学技術データのためのカラーマップエディタ作成
氏名: 鶴見 沙織 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 科学技術計算によって得られた数値データを解析する際,可視化が広く用いられている.可視化では,一般的に数値データを擬似的に色に変換して画像を表示する.このとき,色相を線形に変化させた虹色のカラーマップが多く利用されてきたが,近年の研究では,この色相変化から値の連続性を直感的に理解するのは困難であるという報告がある.この問題を回避するためには,ユーザは別のカラーマップを利用するか,独自に新たなカラーマップを作成しなければならない.しかし,研究者は可視化の専門家であるとは限らないため,対象データに適したカラーマップを作成するのは困難である.これらのことから,ユーザには可視化したいデータの分野や,その画像の使用目的に合ったカラーマップを推奨するシステムが必要であると考えられる.
 そこで本研究では,ユーザの簡単な操作によって,データに応じた適切なカラーマップを提示するシステムの構築を試みる.まず,IEEE TVCG などの可視化技術論文に掲載されている可視化画像と,そこで使用されているカラーマップの収集を行う.収集したカラーマップは使用されていた分野や,目的ごとに分類する.カラーマップからは色相,彩度,明度の値をそれぞれ抽出し,数値データを色に変換する伝達関数を設計する.次に,カラーマップを提示するためのアプリケーションを開発する.収集したカラーマップの情報は,適用分野と関連付け,システム内に格納しておく.ユーザが可視化したいデータを読み込ませ,分野を選択すると,そのデータに適したカラーマップが一覧として表示される.更に,一覧の中からカラーマップを選択すると,そのカラーマップを用いて可視化した結果が表示される.可視化結果は,ユーザによって調整が可能である.
 今回,50 種類の可視化画像からカラーマップを収集し,医療,気候,地形,分子,流れ場,その他の6 分野に分類した.また,可視化対象を2 次元データに限定して,システムを構築した.本システムにより,カラーマップや可視化に関しての知識がないユーザでも,適切なカラーマップを容易に選択でき,見る人が直感的に理解できる可視化画像を作成することが可能になると考えられる.
竹田 紗耶香: 世界の風景写真における季節ごとの色彩変化の可視化
氏名: 竹田 紗耶香 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 旅行サイトやパンフレットに掲載されている写真は、特定の季節の写真だけの場合が多く、すべての季節で撮影された写真はほとんど掲載されていない。これにより、掲載されている写真と異なる時期に旅行先に訪れた場合、写真でのイメージと実際に旅行先で見る風景との間に違いが生じてしまう。そこで本研究では、風景写真の色彩を変化させ、その地域、季節に応じた画像を生成する方法を提案する。本研究により、旅行する時期に合わせた旅行地のイメージ画像を生成することが可能である。
 提案手法として、まず色彩情報を取得するため、写真共有サイトであるFlickr を使用し、画像の収集を行う。このとき、季節ごとの色彩を調べるため、撮影日時の情報を持っている画像のみを収集する。次に、収集した画像を地域および季節別に分類し、それぞれの代表色を抽出する。代表色の抽出には、既存のシステムを利用する。最後に、対象画像の代表色を各季節の代表色に置き換える。具体的には、対象画像における指定箇所の色相情報を取得し、類似した色相をもつ領域を特定する。そして、その領域に含まれる各画素の色相を、季節の代表色から選択した色相に置き換える。このとき輝度値は、元の画像の値を利用する。
 まず、地域ごとの季節による代表色の違いを比較するために、世界地図上に観光名所の季節別代表色をマッピングした。これにより、地域別、また季節別の主な代表色が一目で分かる。例えば、日本は桜があるため、春の代表色にピンクが入っており、四季によって代表色に違いが見られたが、ヨーロッパでは春と夏の代表色にあまり違いが見られなかった。
 次に、代表色を置き換えるシステムを使用し、さまざまな季節の風景写真を生成した。その際、抽出した代表色を明度が低い順に1 色ずつ全て置き換えると不自然な色に変わってしまうことが確認された。そこで、季節で色が変わる植物のみの色を置き換えたところ、上記の方法に比べ、自然な風景写真を生成することができた。このことから、植物の色を置き換えることが、より季節感がわかりやすくなり有効であることがわかった。しかし、季節感を表す桜や雪などは建物や雲と色が似ており、植物以外の色も変わってしまうことがあった。この問題は、物体認識技術を組み込むことで解決可能であると考えられる。
和田 健太郎: 粒子法を用いた土砂崩れのビジュアルシミュレーション
氏名: 和田 健太郎 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 土砂崩れは、斜面表層の土砂や岩石が滑り落ちる現象のことである。日本においては、国土面積の約7 割が山地や丘陵であることに加えて、降水量も多いことから、年間1000 件近くの土砂崩れが発生している。そのため、土砂崩れが起こりうる場所や、発生時の被害状況などを、推測することが必要とされている。一部の地域では実地調査が行われているが、全国各地の状況を把握することは大変困難である。また、地形や土壌の物性、堆積量などによって、土砂の移動速度や到達範囲が大きく異なるため、特定の地域の調査で得られた情報を元に、各地の被害を予測することは危険である、以上のことから、地形や土壌を考慮した、被害予測のシミュレーションを実施することが望ましい。しかし、土砂の挙動を数値的に解く技術は確立されておらず、現状正確な計算を行うことはできない。一方、土砂崩れの被害の予測で最も重要となる情報は、土砂の到達範囲である。正確なシミュレーションを実施することができなくても、土砂の到達範囲の情報を得ることができれば、降雨時の危険地域の指定や、植林による被害の予防に活用可能である。
 そこで本研究では、粒子法を用いた土砂崩れのビジュアルシミュレーションシステムを提案する。粒子を配置する際に、シミュレーション対象とする地形を再現するため、国土地理院で公開されている実際の地形データを利用する。また、構造物による流れの変化を考慮するため、構造物の配置も可能にする。粒子法によるシミュレーションでは、異なる粘性の値をもつ液体粒子を用いることで、模擬的に土砂を表現する。
 本システムの有効性を検証するため、粘性を変化させたシミュレーション、および、構造物の配置を変化させたシミュレーションを実行した。なお、今回の実験では、実際の地形を用いたものの、粘性および構造物の配置は仮想のデータを用いた。その結果、粘性や構造物の配置によって、土砂崩れが異なる挙動を示すことがわかった。本システムにより、全国各地の土砂災害の被害予測が視覚的に理解できるようになり、被害の予防に役立つことが期待される。
大和  秀征: 3次元CGモデリングにおける方法論の分類とワークフローの提示
氏名: 大和 秀征 指導教員: 竹島 由里子 准教授
 3次元CG の制作では、モデリングとよばれる工程でコンピューター上での造形が行われるが、その作業の進め方は自由度が高く、制作者個人の進め方が重視されることが多い。しかし、初心者は実際に作業を行った経験が少ないことから、制作に余計な時間がかかってしまう。どのような手順で作業していくのかを理解することは、よりよい制作を行う上で大変重要である。
 CG 制作の学習には、書籍やインターネット上の動画や画像、テキストなどのチュートリアルが広く用いられている。既存のチュートリアルの多くは、実際に具体的なモデルを制作しながら、ソフトウェアの機能について解説をしていく形式を採用している。しかし、画像やテキストのチュートリアルでは操作の動きを理解するのが難しい。また、動画では解説者の操作を目で追うのだけで精一杯になり、何度も再生、巻き戻しを繰り返しながら作業しなければならない。一方、チュートリアルの制作者は、個々の事例ごとに画像や動画を作成する必要があり、数多くのチュートリアルを用意することは困難である。
 そこで本研究では、モデリングのワークフロー構築の新たな枠組みと、それをもとにした学習支援ツールを提案する。具体的には、3次元モデルの使用用途など、モデルの仕様を決定する要素を分類し、モデリング工程がどのように変化するのかを考察する。そして、それらの変化に対応できるワークフロー構築の枠組みを提案する。加えて、モデリングで行われる操作をその目的や操作手順によって切り分け、それぞれを手法系という操作群の1つのまとまりとして扱い、作業内容を動画にまとめる。これによって学習者には、ワークフローによる全体像の提示により、短期間で制作への理解を高める学習環境を提供する。また、チュートリアルの制作者には、手法系の動画を組み合わせる方法をとることで、より容易にチュートリアルを作成できる環境を提供する。
 本ツールの有用性を確かめるため、学習にかかった時間や理解度を調査するユーザーテストを行い、理解度や学習効率が向上しているかを検証する。また、本ツールによってチュートリアルの作成にかかる手間を軽減できるかを検証する。